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元素的戦地調停概論
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ここでぼんやりと空を眺めているのが好きだ。
娯楽といったものが殆どないこのストリアの村では酒場に集まって飲んだくれたり、こうしてどこか自分の気に入った場所でのんびりと過ごしている事が一番の楽しみだった。
魔女の森に長く居ると気が触れると村の大人達は顔をしかめるけれど、俺はきっとどこよりもこの森の中に居る時間の方が長いと思う。
気がついたときにはこの森に居た。
親父が死んだのは自分が10歳になった年だったと覚えているが、それ以前の事はあまり覚えていない。
父親というよりは師匠という印象の男だったと感じている。
斧の使い方、木の切り方、力の使い方。
そして一人で生きていく為に必要なこと。
思えば最初から親父は自分があまり長く生きていられない事を知っていたのかもしれない。
自分が死んだ後、俺が生きていく為に必要なことは全て教えてくれていた。

それに気付いたのは親父が死んだ何年も後で、それまでの間は向かいに住んでいるモリアとメイアの家に住まわせて貰っていた。
モリアは長老とも大婆とも…「魔女」とも呼ばれている。
「悪いことをするとモリアに大鍋で煮込まれる」と脅された事がない子どもはストリアには一人としていない筈だ。
俺も最初モリアの小屋へ呼ばれた時は遂に自分が煮込まれシチューにされる番なのかと思って恐ろしくなり、いざモリアが家まで訪ねて来た時など台所の大甕に隠れ、見つかった時には大泣きしたそうだ。
今でもモリアはその事で俺をからかうから質が悪い。
だがそんなモリアもやはりストレイガの姓を持つ女である事には違いなく、ヒーラーの資質こそ無いものの、百歳を越えたとも云われる今でさえ魔法の力は強大である。
そして共に住むメイアはモリアの曾孫にあたる、俺よりひとつ年上の女の子だ。
両親はメイアを産んだあとしばらくして病で死んでしまったらしい。
祖父母も居なかったメイアを引き取ったのはいまだ元気だったモリアだった。
元々子どもの少ないストリアである。
物心ついた頃から俺とメイアはずっと一緒に居た。
出合った頃はずっと遊び相手として、少ししてからは親友と呼び合うようになり、今ではかけがえの無い半身となっていた。
モリアには散々嫌味を言われたが、今では渋々といった様子で見守っていてくれている。

木々に四角く切り取られた空を見上げながら、ぼんやりとその頃の事を思い出したりしていた。
この場所は何故かそんな気にさせる。
小さな頃、好奇心のままに森の奥深くまで入り込んでしまって、帰り道が分からなくなってしまった事があった。
そんな時に迷い込んだのがここだ。
モリアもきっと知らない、俺とメイアだけの秘密の場所。
小さな黒い石碑の周りを、他では見た事の無い黄色い花が取り囲んでいる。
俺はそこにある石碑からヒュンケル墓標と名付けたのだが、メイアはその名が気に入らず、仕方なく「黄色い花畑」と呼んでいた。
ふいに手を伸ばして、石碑に触れる。
表面に生えた苔が指をくすぐる。少し力を入れるとその下のひんやりと冷たく、ザラっとした硬い石の感触が伝わってきた。
それに触れていると、何故か自分が伝説の登場人物になった気になる。
つい数年前までは自分達のすぐ近くに居た伝説の登場人物。
書物では暴虐の限りを尽くし討伐された独裁の王として書かれ。物語では森をも見渡す怪力の大男として伝えられ。吟遊詩人は苦悩に満ちた怪力の孤独王として詠われ。御伽噺では人に化けた化け物と読まれた。
故王の第一子として即位した彼はその次の年には独裁王と呼ばれ、その次の年には貴族達が革命軍と名乗り、また年が変わる頃には王位を剥奪され逃げ出した。
その短い期間に出た被害と死傷者の数は、智の大国と名高いエルソード国の賢王ナイアスですら数えきる事ができないのだという。
そんな王も革命軍の攻撃の前に破れ、我が子を盾に獣の様に逃げだしたのだという。
深く暗い、この魔女の住む森へと。

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